十一月八日

前の話

 

「漢方、すごい効くなあ!」

とノリノリで朝の薬を飲んだら、粉が喉の奥に張り付いてむせそうになった。
粉薬は苦手だが、漢方薬は香り高くてちょっと美味しい。

バイト先までの通勤中、いつもより体の調子が良い気がした。
爪先まで血のめぐっている感じとでも言えるだろうか。
処方された漢方の「気持ちの落ち込みを緩和する」みたいなやつが効いているのか、バイトは機嫌良くこなせた。

思っていたら、午後になって電池が切れた。

体が重い。
気疲れでも動きすぎの疲労でもないダルさ。
なんだかちょっとふらふらする。

今の今までが漢方薬の効果だったのだとすれば……。と、私は考えた。
薬の効果が切れたらしい現状が、私の平常運転だったのか? 
調子の良い状態を体験すると落差が良く分かるが、よく今まで何の不自由もなく暮らしてきたものだ。
活動するにはこんなにエネルギーを消費するのか。

人間はストレスや刺激に慣れると何も感じなくなると言うが、どうやらそれを自分で体験しているらしい。
一日中テキパキ活動している人をますます尊敬する。

夕食後の薬はちょっと苦く感じた。
三種類あるうちのどれを先に飲んだらあとを苦く感じないか、いろいろ試してみる必要がありそうだ。

寝る前になるといよいよスイッチが切れてきて、今すぐ倒れ込んで床だろうがどこだろうが快適に寝られそうな感じになってきた。
今日はあまり足先が温かくない。プラシーボ効果だったのかもしれない。

布団に入って意識が睡眠へ向かいながら、ふとこの記録をつける事を思いついた。
闘病……というほど重い症状ではないだろうが、世間には顎関節症を知らずに暮らしている人があるかもしれない。
私と同じように、謎の息苦しさで悩んでいる人があるかもしれない。
他にも、文章を書く人間として、これは良いネタになるじゃないかと自らを実験台にするような感じで考えた。

 

そうそう。一つ新たに起きたことがあった。
顎が軽く元の位置に戻りかけたのだ。

湯船につかって首と肩の辺りを温めていると、突然「あの感覚」がやってきた。
顎の位置が元に戻る感じ……と言っても、伝えるのが難しい。

実はこの感覚はすでに体験したことがある。
整骨院で肩の凝りを入念にほぐしてもらった翌日のことだ。

朝目を覚ますと、左側の顎が痛い。
だが異様なズレで生じている感じもなく、むしろ顎の骨が正しい位置に戻った感じがした。
筋肉は繋がっているので、一箇所の凝りがとれれば他の部位の歪みも治るのかな。すごいな! と、ひどく感動したものだった。

以来、「正しい顎の位置が分からなくなってきた頃」を、整骨院に予約を入れる目安にしていたのだが、顎関節症だったことを知ると、そんなに悠長に構えていて良いものではかったのだなと反省する。

ただ一つ言えるのは、肩をほぐしただけで顎の歪みまで元に戻した、あの整骨院の先生の腕が確かであるということだ。

 

 

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