12月30日  応援

「優木、お願いがあるの」

私の改まった口調に、バイトの制服を畳んでいた優木は手を止めた。

ああ、こんなこと。お願いしていいのかな。さすがに図々しい? 優木にも予定があるだろうし……。

あれこれ心配を並べたてる頭を、私は「ちょっと待ちなさい」と黙らせる。

頼んでみるだけ。優木なら、無理だったらはっきりとそう言ってくれるだろうし。頼まなければ、動かなければ結果は分からないよ。

まっすぐ目を見つめた。

「お願い! 明日の私のバイト、代わってくれない?」

聖夜さんとのその後のやりとりで、明日の朝、ディズニーランドへ出発することになったの。当初のお誘い通り、年越しのイベントがあるからね。

バイトしてからじゃ間に合わない。でも、行きたい。私はダメモトで優木に頼むことを思いついたのだった。

「ふーん。珍しいね。なんで?」

好奇心を目に浮かべて尋ねてくる。予想通りの反応。

私は気合を入れようと両手に力を入れた。

「……実は、今好きな人がいて。その人にね、大晦日にディズニーランドに行かないかって誘われてて……それで、その」

「行きたいんだ?」

問いかけられて、頷く。優木は考えこむように腕を組んだ。私は返事を待った。

「うん。いいよ」

ちょっとも経たずに優木は言った。底抜けに明るい声に、頼んだ私の方がびっくりしてしまう。

「ほんとに……いいの?」

「もちろん。嫌ならいやだって言うってば」

そう言って親指を立てる。私は目の前で起こっていることが信じられず、ただただ茫然と優木を見つめていた。

優木は言う。

「そんなに真剣な南波、初めて見たもん。きっと素敵な人なんだろうね。それにさ、南波ってここ何日かですごく変わった。あたしはそんな南波を応援したいなーと思って」

「あ……ありがとう」

驚きを拭えないまま感謝する。優木、そんな風に思ってくれていたんだ。

心がじわりと震えて、目頭さえ熱くなる。

それを知ってか知らずか、真面目な雰囲気だった優木は一瞬で表情を崩した。痛いほどの力で私の背中をバシバシ叩く。

「そ・の・か・わ・り! 絶対告白してきなさいよ? 一緒にディズニーランドとか、まだカレカノじゃないとか、告白のチャンスしかないから! 南波が告白するだろうから、あたしはバイトを代(か)わる! そういうことにするから。何も言わずに帰ってきたら承知しないよ!」

「は、はい!」

なんて強引な背中の押し方。

でもそんな優木が、この言葉で気合の入る自分が、私は嫌いじゃない。