12月24日

私は泣いていた。

泣いていたのを、覚えている。

部屋の中は暗い。壁にかけられた時計はたぶん、真夜中くらいをさしていた。この頃はまだ時計の見方が分かっていなかったから、たぶんだ。

冷たい空気の中に二つの布団が敷いてある。私の隣ではおばあちゃんが眠っていた。おばちゃんも泣いていたはずだけど……。泣いている間に寝てしまったのかな。

私はわけが分からなかった。何も分からないまま眠ったはずだった。目が覚めて、暗い部屋の中を見回したら、涙が出てきてしまった。

外は雪が積もっていく音がする。シンシンと、世界の音を吸い込んでいく音。部屋の隅に飾られたツリーの電飾が、虚しく光を放ち続けていた。

窓がサッシを転がる音。嗚咽の間に聞こえたその音を、私は全く気にも留めなかった。

そんなことはどうでも良いと思っていた。

のだけれど。

「どうしたの?」

男の子の声がした。子供っぽくて高いのに、少し大人びているような響き。私は涙で顔がぐしゃぐしゃで、涙をこらえることもできなくて、顔を俯けたままでいた。

私は言った。

「お父さんが……。お母さんが。帰ってこないの」

口に出すとその事実がますます胸に迫って、私の両肩を冷たくさせた。私があまりにもわんわん泣き出すから、きっとその子は困ったんじゃないかな。

その子はしばらく黙っていた。それから黒い手袋をした手を慎重に伸ばして、そっと私の頭に置いた。慣れない手つきでぎこちなく、でも温かく頭を撫でていく。私はびっくりして顔を上げた。

男の子と目が合う。見上げた彼は九歳かそこらに見えた。青味がかった紺色の髪と目が見る人をはっと惹きつける。目が離せなくなる雰囲気だ。

呆然と見上げていると、男の子が口を開いた。

「大丈夫。二人は遠くに行ったわけじゃないよ。ちゃんと君のことを見守ってる。だからもう泣かないで。笑ってごらん」

言われるまま笑おうとしてみる。うるんだ目を細めたら、男の子の顔がぼやけて見えなくなってしまった。できるだけ口角を上げるけど、きっとうまく笑えてはいない。

それでも男の子は優しく響く笑い声を洩らした。温かい手が離れる。

遠ざかる気配。

男の子はベランダに向いた窓から外へ出ようとしていた。窓枠に手をついて振り返る。微笑んで手を振った。

「またね。……南波ちゃん」

ためらいがちに名前を呼ぶ。去って行く後姿はかすんでよく見えなかった。

それでもその名の呼び方は、今までされたことがないぐらい柔らかくて、はっとするもので……だからその声の響きが、強く心に刻みつけられた。