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「宗教戦争」の連鎖【第165回直木賞・第34回山本周五郎賞受賞作『テスカトリポカ』読後感想&考察】

小説 -novels-
Image by carloyuen from Pixabay

こんにちは。皇月ノエルです。

新鮮な発見:こんな話が直木賞

第165回直木賞・第34回山本周五郎賞をW受賞した作品。

佐藤究先生著『テスカトリポカ』を読了しました。ボリュームたっぷりでした!

今回は『テスカトリポカ』の感想と、私なりの考察を書いていきます。

ネタバレには配慮しており、核心に触れる内容に関してはふせったーのリンクのみ貼っておくので、ネタバレは避けたいという方も安心してどうぞ。

直木賞に対する(勝手な)イメージを覆された

『テスカトリポカ』が直木賞を受賞したというニュースの直後、Twitter上でこんな感じのツイートを見ました。

「メキシコのマフィアと日本のヤクザと薬物といろいろ出てくる小説が、直木賞取って大丈夫なんですか!」

文面から察するに、ツイ主さんは佐藤究先生のファンで、上のツイートは究極の褒め言葉だったと思います。

私は佐藤究先生のことをほとんど何も知らず、著作を読むのも『テスカトリポカ』が初めてなので、上のツイートを読んで「えっ、そんな話なの!?」とびっくりしていました。

書名を聞いて最初に思い浮かべたのはラテン語で、何やら小難しい、文学的な話なのかな……?と思っていたのです。

良い意味で、全然難しくありませんでした!

そして良い意味で、「直木賞」に対する私の勝手なイメージすら覆されました。

去年から「芥川賞と直木賞を取った作品を、勉強のために毎年読むことにしよう」と決めた私。

去年読んだ『心淋し川』は、江戸時代を舞台にした考えさせられる群像劇でした。

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「直木賞」という格式ある賞、という先入観もあり、私は受賞作は「優等生的な」「品行方正な」作品ばかりではと思っていたのです。

『テスカトリポカ』が私の勝手な先入観をぶち壊しました。

言うなれば制服をきちんと着こなした学生たちの列の中に、ひとりだけ変形学ランを着た不良が紛れ込んで、一緒に受賞したイメージ。(褒めてます)

こういうダークで刺激的な作品も、直木賞に選ばれるのか!

文学って難しいなっ!(褒めてます)

 

感想たち

これもまた、装丁が美しいんよ

新しい本を読む時、どんなジャンルの本だろうが、私はまずカバーを外します。

カバーのデザインもさることながら、本体表紙のデザインが、カバーと対比して素晴らしいということが多々あるからです。

これまでに読んだ作品だと、同じく第165回芥川賞を受賞した『貝に続く場所にて』のデザインが、私的には美しくて好きです。

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『テスカトリポカ』の本体デザインも、未読の状態でもすでに「綺麗だ」と思えるのに、読み終えた後に眺めるとまた「はっ!」とさせられるものが描かれているので、ぜひともカバーの奥を見てほしいです。

懐かしいスペイン語たち

実は20年ほど前、パナマに住んでいたことがあります。

パナマはメキシコと同じくスペイン語圏であり、近いのでメキシコの「チェチェン・イッツァ」に旅行に行ったこともあります。

『テスカトリポカ』にはスペイン語と『パナマ運河』という単語が頻出するので、その面ではとても懐かしい気持ちになって読みました。

メキシコに行った時のお土産として、小さい「チャックモール」の像を買ってきたのですが……。「リアルに想像できると怖いやつ」に認識が改まったというか。

当時も儀式に使うものであること、儀式の内容まで親に教えてもらって知っていたのですが、子どもだったので想像力に限りがあったのでしょうね。

『テスカトリポカ』の文脈で改めて「チャックモール」について考えると……ああ……うん、痛いね(´・ω・`)

改めて文明の儀式について考えさせられたのでした。

 

とはいえ、メジャーじゃない儀式だから「異様」に見えるのであって、それって時代や場所の価値観に左右されますよね。

日本にだって人身御供があり、キリスト教には魔女狩りがありました。

キリスト教が世界三大宗教のひとつで、信者が多いからといって、過去の魔女狩りは正当化できるものではないと思うし、仮に日本も定期的に生け贄を捧げる文化があるとしたら、儀式のことを聞いても「うわぁ(引)」とはならないでしょう。

「うわぁ(´・ω・`)」と思ってしまう自分の価値観を見直しながら、『テスカトリポカ』を読み進めました。

もしも宮口先生がいれば

『ケーキの切れない非行少年たち』という新書があります。

少年院にいる少年たちには「境界認知の弱さ」があることが多く、そもそも人の気持ちを思いやったり、反省したりすることが難しい場合があること、認知能力を底上げするために効果的なワークのやり方などが書かれています。

宮口先生の指導によって認知能力を向上させ、気持ちも豊かになっていく少年たちの姿。

『ケーキの切れない非行少年たち』の内容を知った上で『テスカトリポカ』を読むと、ある登場人物について「場所と、そばにいる人が違っていれば」と思わずにはいられません。

あの登場人物に必要だったのはごく一般的な世界に触れる機会と「コグトレ」(宮口先生が考案したトレーニング)であり、闇雲に反省を強要するような環境ではなかったはずなのに。

勿体ない。そして、惜しい。

けれどもこれが少年院の現実なのかなと考えると、小説に感じた「惜しさ」は現実に飛び出して、現代社会の問題を切り取った一場面として真実味を帯びてきます。

小説の中で「勿体ない」と感じるだけにとどまらず、現状への惜しさを踏まえた上で何かできればと思わされます。

急な仙台の出現

急に、仙台市にある「東北循環器医療センター」が登場して、思わずニヤリとしてしまいました。

極道モノって首都圏かススキノを舞台にしたものが多いと勝手に思っていたので、急に仙台という地名が出てきて、物語の身近さが増した気がしたのです。

今は泉中央に移転した「循環器病センター」のことだと思うのですが、あの綺麗で、待ち時間が長い病院と縁のある人がいると思うと、おもしろいというか、すごいというか。

物語の中に、優秀な研究者がいるという設定で東北大学が取り上げられることもあるので、同じ東北人として嬉しい限りです。

恐怖の語彙を集めて

『テスカトリポカ』の中で印象的だったのは、語彙の平易さ。

良い意味で、難しい言葉が出てこない。日本人が会話する時に使うような、ニュースで使われるような、言葉たち。

それなのに、描写が怖い。暗い。血なまぐさい。

これはすごい技術だと思います。

まるで普段使う言葉を寄せ集めてきて、その中からぴりりと張りつめるものだけを残して本文を構成したかのような。

その研ぎ澄まされた言葉たちが読者に迫り、ダークな世界観を読者たちの想像力の中に広げていくのでしょう。

参考文献を見るおもしろさ

小説を書くのにも参考文献って大事で、私も「書きたいけど、詳しくない」分野のために読みまくる時があります。

つまり、巻末の「参考文献」のページを眺めるのはとても楽しい。

間接的に、作者の頭の中を覗く感じというか。

この素晴らしい作品を作るために、一体どんなことを「知りたい」と思ったのか?

ドキュメンタリーを観るように、参考文献を読むのです。

『テスカトリポカ』の参考文献ページも興味深いものがありました。

まず目に飛び込んでくるのは、たくさんのメキシコとアステカに関わる書名たち。

その中に「銃火器」や「ナイフ」など、「本編のここに活かされてるのかな」と思える書名が混ざります。

私は佐藤究先生の著作を読むのは初めてで、先生について『テスカトリポカ』以上のことを存じ上げないのですが、参考文献から勝手に想像を膨らませて、

  • 銃火器系の本が少ないから、もともと知識を持っている人なのかな
  • 少年院の描写がリアルだったのに、参考文献としては少ないから詳しい人なのかな
  • メキシコとアステカについて調べまくってるけど、取材旅行に行ったりはしたのかな。それとも書籍の情報だけでこんなにすごいものを書いたのかな

などなど、参考文献と本編を繋ぎ合わせて楽しんでいます。

「思想の違い」と「宗教戦争」の共通点

世界各地で起こる、いわゆる「宗教戦争」。

どうして起きてしまうのでしょうか。

私は原因の根底に「思想の違い」があると思っています。

Aを唯一絶対に正しくて、世界一良いと思うグループ。

Bを絶対に正しくて、世界一良いと思うグループ。

Bの場所にAがやってきて、「Aは良いから、一緒に信仰しよう!」と押し付けを行えば、Bは「はぁ?」となります。

そして、そこで争いが始まってしまう。

この構図は、実は宗教だけに限らないのではないでしょうか。

宗教とは別のところで、思想の違いから起こる「宗教戦争」は頻発しています。

思想が違う人間同士が分かり合うのは難しい。

なんなら近しいところにいると思っていた他人と完璧に分かり合うことなんてできない。

それでも人と上手くやろうとしたり、自分の都合のために利用しようとしたりして、人は人と関わっていく……『テスカトリポカ』を読んで、そんなことを思いました。

そのまま映画にしてくれ!観に行くぞ!

全5部構成の本編が面白すぎて、迫力ありすぎて、誰か映画にしてくれないかなと思いました。

ハリポタの最終巻『死の秘宝』みたいに、ほぼ原作通り。

4部構成になっても映画館に通うから、ぜひとも迫力ある映像で『テスカトリポカ』の世界に浸りたい!

折あるごとに読み直し、触れ直し、物語が持つ意味について考えたくなります。

【ふせったー】追記:最初の悲劇、結末について思うことなど

物語の確認に触れる内容は、ふせったーを利用してワンクッションおいて書いてます。

無料で読めるので、読了後の方、一緒に考察したい方など、ぜひぜひ併せてご一読いただければ嬉しいです。

関連:第165回芥川賞・直木賞受賞作感想シリーズ

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いわゆる「ディストピアもの」に分類される小説で、血なまぐさい描写に『テスカトリポカ』と同じ香りを感じます。

映画のように脳内に繰り広げられる美しい戦闘と、著名な文学を織り交ぜた言語学的なやりとり、描写、そして「そう持ってくるのか!」と驚かされる結末まで。

未読の方はぜひ、この機会に読んでみてはいかがでしょうか。

 

なんか熱く語ってたらものすごい長い記事になってしまいました。

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

 

Thank you for your reading!
I wish you all the best!

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