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平成という時代と、生と死とを考える【古市憲寿『平成くん、さようなら』ネタバレなしで読後感想と考察】

小説 -novels-
Image by Couleur from Pixabay

こんにちは。皇月ノエルです。

背表紙が目に留まり、手に取った『平成くん、さようなら』(文芸春秋)を読みました。

感情を揺さぶられ、いろいろ考えさせられる話。

感想をまとめておきたいと思いました。

結末に関するネタバレは避けて書いていくので、安心して読んでもらえればと思います。

一切のネタバレが嫌だという方はご注意ください!

感想たち

「平成」を詰めこんだ1冊

元号が令和に変わった今、『平成くん、さようなら』を読んでまず感じたのは平成らしさでした。

Googleで共有される予定。

食べログで見つけたお店に行く。

開かれるSurface Pro。

物語の序盤から、平成に登場した電子機器やサービス名が羅列され、読みながら平成という時代を振り返ることができます。

さらに「平成らしさ」を強調させるのは、重要な登場人物でもある「平成くん」と、その恋人の愛ちゃん。

平成くんの服装や外見、話し方、暮らし方にも「平成らしさ」「平成の若者らしさ」が凝縮され、「あー。平成っぽいわ」と言いたくなってしまいます。

また、平成くんと愛ちゃんは同棲する恋人同士ですが、いちゃいちゃべったりというものでもなく、どちらかというと関係性はあっさりしたものです。

大切に想っていないわけではないけれど、毎日「好きだよ」と言ったりするわけでもなく。

そんな淡泊さは、「昭和」の恋人観とはまた違ったものではないでしょうか。

昭和を知る人が読んだらどんな感想を持つのかな?

生憎、経験した時代をさかのぼることはできません。

私は変更のしようもなく平成生まれであり、「昭和っぽい」「懐かしい」雰囲気を愛することはできても、昭和という時代をじかに経験することはできないのです。

「平成生まれ」「今どきの若い奴は」という言葉に触れて生きてきた私は、平成という時代の終わりに自分なりのものごとを考え、『平成くん、さようなら』を読んでまた過ぎゆく時代と「平成くん」の外見や生き方について独自の感想を持っています。

そうすると気になってくるのが、異なる時代を知っている人たちの感想。

例えば身近なところで昭和に生まれた人たちや、「これだからゆとり世代は」などと口走ってきた人たちの感想です。

ゆとり世代をあげつらって愚痴る人はそもそもこの本を読まないかもしれませんが、大きくくくって昭和世代の人たちは、この本を読んでどんな感想を抱くんだろう?

さらにはもっと年月が経って、令和に生まれた人たちがこの本を読んだら?

気になっていることのひとつです。

浮世離れしたくらし方がやべぇ

平成くんは売れっ子のコメンテーター、恋人の愛ちゃんは父親が生み出した人気キャラクターの著作権を管理する仕事などをしているよう。

ゆえに2人は裕福な暮らしをしており、作中には私にとってなじみのないブランド名がたくさん出てきます。

聞いたことがあったのは「ジェラートピケ」と「シャネル」「グッチ」「バイタミックス」「クリスタルガイザー」ぐらい。

ファッションに興味がないとはいえ、高品質なものは好きなので、まったく有名ブランドを知らないわけではないつもり。

そんな自負を軽々超えていく、超高級ブランドと思われる名前が頻出するので、2人の暮らしぶりが窺えて途方もない気分になりました。

私は嫉妬というより、「文化人の暮らしを見学させていただいている好奇心」の方があったかな。

私が引きこまれた個人的な理由

この『平成くん、さようなら』。

読み終わった直後にこの記事を書いているわけですが、私にとって印象深い、長く忘れられない作品のひとつになりそうです。

ものすごくいろいろ考えさせられ、のめり込んで読みました。

その最大の理由は、平成くんがアレムルアに似ているからです。

アレムルアは私の守護霊(普段は「上の人」と呼んでいます)のひとりで、180センチを超える長身、細身で、服装を選ばず白いシャツと黒いズボンのことが多く、無造作に長めの黒髪が目元にかかった見た目をしています。

いつも冷静で感情の起伏が小さく、指摘や助言を淡々と話す。

平成くんとアレムルアの間で違うのは髪質ぐらいで、本当に、読んでいる間、平成くんのセリフは全部アレムルアの声で脳内再生されていたくらいです。

だからこそ、平成くんの語る「死」を自分に影響するものとして捉えたし、もし自分が愛ちゃんと同じ立場に立ったら、なんて言うか……考えながら読みました。

守護霊と言っても一生見守ってくれるとは限らず、守護霊自身の生まれ変わりや交代などで、見守り期間が終わるという概念があるようです。

守護霊ならば死ぬことはないけれど、上のような理由で離れていくことはあります。

そうなっちゃったら寂しいなぁ、どう言って引き留めを試みようかなぁなどと考えたりしながら読みました。

 

考察もはさんでみた

「平成くん」のモデルを考察

平成くんの外見が描写されているところで感じたのですが。

平成くんのモデルって、つまり作者である古市さんでは?

しかも「平成人」と言われて納得のしやすい容貌をしていた。187センチという長身に、宇宙人のような逆三角形の輪郭の小さな顔。目元までを覆うような重たい前髪。細いながらも眼光の鋭い目。だけど唇は分厚くて、モデルといわれても、連続殺人犯といわれても、納得できてしまうような顔つきだ。

私はあまりテレビを観ないので、古市さんの発言や人となりをよく知っているわけではないけれど、顔の輪郭や前髪、目元の描写を読んだ時に「もしや……」と思いました。

古市さんは「平成くん」を自分に似せた外見にすることで自分を作品世界に投影し、未来に実現するかもしれない技術の可能性を探求しようとしたのではないか……。

そんな風に感じています。

社会構成の緻密な描写がすごすぎる!

著者の古市さんは社会学者とのこと。

その専門性が活きているのか、『平成くん、さようなら』の中には社会の仕組みについての緻密な設定が織り込まれており、非常な感銘を受けました。

小説を読んでいると、作者の専門性や世界の捉え方の片鱗を感じとれる一文があったりします。

私はそれに出会えた瞬間に一種の喜びを感じるタイプで、「作者はこういうことを考えているのかな」などと勝手な想像を膨らませたりして楽しんでいます。

ことに作者が高度な専門性を持っていて、世界観の設定に私からは絶対出てこないような構成があると、ただただ敬服。

これまでは『すばらしい新世界』や『虐殺器官』などがその筆頭でしたが、『平成くん、さようなら』も「すごい世界観の作品」リストに加わりそうです。

 

世界観の構築にうなりたい人に向けて、こちらをおすすめしておきます。

【感想】遠くて近い話――『虐殺器官』
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表紙デザインについて思うこと

この記事を書こうとしてAmazonのリンクを貼ったら、手元にあるのと違う表紙画像がでてきてびっくりしました。

文庫版は、イラスト調な表紙なのですね。

平成くんへのイメージが広がってこれも良い。

ただこの本をじっくり味わうなら、私は単行本バージョンを手に取ることをおすすめしたいです。

カラフルな色彩と、チームラボが作ったような空間の写真。

カバーをめくった本体のモノトーンとの対比が、最後まで読んだ時に「これを意味しているのかな……」と考えさせられます。

 

どうして芥川賞に選ばれなかったの!?という心の叫び

ものすごく感動したのに……

『平成くん、さようなら』は第160回芥川賞の候補に選ばれながら、受賞は別の作品になってしまいました。

現状、私は『平成くん、さようなら』にめちゃくちゃ感動しています。

なんで受賞しなかったんだ! と思ってます。

というわけで、第160回芥川賞を受賞した2作品も読みました。

詳しい感想は、それぞれ別個の記事にまとめています。

現実と創作が混ざり合う幻想【『ニムロッド』読後感想※微ネタバレあり】
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受賞作だけが良い作品、ではないと思う

とはいえ私は、「○○賞受賞!」だけに価値を見出しているわけではありません。

文学賞を受賞した/しなかったって、その時の審査員との相性やタイミングもあると思っていて。

受賞を逃したから価値のない作品だなんてことはありえないし、すべての作品は作者の思いや考え、意見を込めた、重要な文章だと思っています。

そして世界のどこかには、必ず作者の表現に共感/感動する人がいて、本はその人ひとりを救うために存在するのではないでしょうか。

 

 

Thank you for your reading!
 I wish you all the best!

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