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運命の相手との出会い方と「私」の人生【加藤シゲアキ『オルタネート』読後感想】

本の話 -books-
Image by 愚木混株 Cdd20 from Pixabay

こんにちは。皇月ノエルです。

 

直木賞候補作にも選ばれている、加藤シゲアキさん著『オルタネート』を拝読しました。

 

 

高校生たちの心情にフォーカスしたストーリーはとても面白く、「こんな感情に覚えがある」と懐かしさ&境界を見失いこちらがしんどくなるほどの感情移入に陥りました。

物語がクライマックスにさしかかってくると、私恒例の「本が手から離れない病」も発症(笑)。

最後まで大変面白かったです。

 

以下はストーリーの流れや展開に触れることも書きますので、ネタバレ注意でお願いします。

 

※微ネタバレ注意! 感想など

他人の目の解像度で世界を見れる面白さ

以前の記事にも書きましたが、

「言葉を尽くす」ということ
文章を勉強しようと思って小説を開くと、作者さんそれぞれの表現に出会うことができて大変面白い。 さらには「こうすれば分かりやすいのか」「こういう書き方があったのか!」と目からうろこが落ちる瞬間がありすぎて、一時的に語彙力を失いそうになります(笑)。

 

私は「作者さんの物の見方が伝わってくる地の文」を見つけるのが大好きです。

 

「ため息をつくように」閉まる地下鉄のドア、「群れる」自転車、夜空の中で回る「回転木馬」。

絶対に自分の中からは出てこないと思うけれど、言われてみればそんな風にも見える、不思議な言葉たち。

 

『オルタネート』の中にも何カ所かあったのですが、1カ所のみ紹介させてください。

11ページ。登場人物のひとりが手を洗っている時の描写です。

 

蛇口をひねって手を擦り合わせると、伝って落ちる水が静かに濁っていく。

 

学校で手を洗う描写に、「静か」という言葉を使おうとは、自分からは絶対に出てこない発想。

私はいつも、水が洗面台に当たる「音」に着目してしまうからです。

 

これは文章を書く人の観点の違いであり、五感のうち何が鋭いかの特徴・個性を分けるものではないでしょうか。

 

そして手を洗うという何気ない動作をハイスピードカメラでとらえているかのような、蛇口・水・擦り合わされる手をそれぞれ切り取った言葉。

「すげえな」と思いました。

 

知り合う人、すれ違うだけの人

『オルタネート』は、高校生たちの世界で繰り広げられる群像劇です。

視点主になるのは、「円明学園高校」に通う・または付近にいる10代の男女たち。

学年、部活、立場も様々で抱えている事情も違います。

 

これが不思議なところ。

 

群像劇なので、物語は数人の視点で、各主人公たちの抱える問題(解決したいこと)を明らかにしながら進みます。

読者は各主人公の心情を読むことで、彼らの内面までを知り尽くすことができるわけです。

 

ですが各主人公たちは、全員が知り合い・友人というわけではありません。

 

主人公Aの視点では、主人公Bが単に「女の子」と書かれたり。

主人公Bの視点で、「男の子」だった人が、知り合うことで「名前」を得たり。

 

いろいろな出来事の中で、知り合っていく人。

時間の流れの中で、すれ違うだけの人。

知り合うことはない人。

それなのに、同じ高校に通っていて近くには存在している。

 

そんな「近くて遠い」不思議な距離感はリアルであり、同時に妙な寂しさも感じさせられます。

 

読者にとって「大いに共感できる、幸せになってほしい主人公A」が、主人公Cにとっては「ただ通り過ぎて行った人」なのですから。

 

主人公Cには主人公Aの事情も分からなければ、相手の名前さえ知らないのです。

その不思議なもどかしさ、近くを通っているのにぶつからない奇妙さについて、読んでいる間ずっと考えさせられました。

 

視点の切り替え方が上手い

前述の通り『オルタネート』は群像劇なので、視点主がコロコロ切り替わりながら物語が進行していきます。

 

この視点の切り替えが本当に巧みで、読んでいてほとんど混乱しないのがすごいところです。

 

例えば、主人公A→B→C→Aと、一巡する感じで視点が主人公Aに戻って来たとします。

私(一読者)の中にはBとCの情報も蓄積されており、Cの状況が最も新しい記憶。

Bもなんとなく覚えており、Aの人柄・事情は最も古い記憶となります。

 

ところが主人公Aに視点が戻り、文章を数行読めば、主人公Aがどういう人物だったかすぐに思い出せるのです。

 

しかも、「前の登場時に、こういうことやったよね」という確認の言葉は一切出てきません。

 

時間は進行しつつも、主人公Aの人となり・何をどこまでやったかを思い出すことができる。

主人公BとCを一旦脇に置いて、Aを真ん中に持ってくることができる。

 

とっても難しいことだと思います。

 

名前のある人、ない人【主人公の視点に完全に立つということ】

ここは一番ネタバレ注意です!

 

主人公のひとりは、母親の交際相手が嫌いな様子。

彼女視点の文章の時、その交際相手はただ「男」と書かれます。

 

母親は彼の名前を呼んでいるかもしれません。

主人公は彼の名前を知っているのでは……?と予測されます。

 

けれど、ただの「男」。

 

彼女の嫌悪感が、「男」を「男」以上のものとして認識する必要性を感じていないことの現れです。上手い。すごい。

 

キャラクターに名前を与えるのは、ある意味ラクで簡単です。

 

逆に、名前を与えないことの難しさってあると思っています。

 

もし「男」に名前があれば、それはそれで自然な文章になると思われます。

しかし、あえてその「男」を「男」のままにしておくことで、主人公が彼に抱く嫌悪の深さを表現することができてしまうのです。

 

新しい技術を教えてもらった気がしています。

 

考えたこと:運命の相手はAIによって導かれるか?

タイトルでもある『オルタネート』とは、高校生だけが使える出会い系SNSアプリです。

 

他のSNSと同じように、高校生たちのオルタネートに対する印象は様々。

もはや信仰レベルに信頼している人、当たり前に使っている人、使ってない少数の人が登場します。

 

読み進めている間、私はずっと考えていました。

 

「オルタネート」は、高度なAIが個人の様々な情報をもとに、相性の良さそうな人を提案してくれるといいます。

相性の良い人が見つかれば、交際も結婚も上手くいき、その後の人生の幸せが手に入る――かのように見えるでしょう。

 

でも、本当にそうでしょうか?

 

AIによって提案された「相性の良い相手」はなんだか無機質……いや、データを否定するわけじゃないけど……。と、ずっとモヤモヤしていたのです。

 

ですが本を読み終えて余韻に浸っていた時、そこに私の考えを一言で表現できる言葉が浮かんできました。

 

私のモヤモヤの原因は、「タイミング」だったのです。

 

オルタネートは自分に相性の良い相手を提案してくれます。

ですが、運命の相手に、高校生のうちに出会えると決まっているわけではありません。

また、オルタネートは高校生限定のアプリなので、3歳以上年の離れた恋愛・結婚の可能性はゼロです。

 

中高生は様々な価値観に触れ、「自分」について考える時期でもあり、入学したころと卒業するころでは、外見や価値観が大きく変わる可能性があります。

 

人間は「相性がいいですよ」という情報だけでは人を心から好きになることはできず、やはり外見・価値観・人間性なども重要ではないでしょうか。

 

オルタネートは様々な人と人が出会う可能性を提供してくれますが、一方で、もっと遅く出会うはずだった人たちを、早く出会わせてしまう可能性も秘めているのでは……と思ったのです。

 

それが私のモヤモヤの原因でした。

 

「運命の人がいるなら、早く出会いたい!」と願う人は一定数いると思います。

早く出会えれば、早く幸せになれる気がするのです。

 

でも、必ずしもそうとは限らないのではないでしょうか。

 

人間は変化する生き物ですから、価値観の変化、外見の変化、選ぶ言葉の変化など、たくさんの変化を経験していきます。

 

様々な変化を経て、「出会うべき時にその人に出会う」からこそ、「心惹かれる」と感じられると思うのです。

 

逆に、変化を経ないうちに出会っていたら、「自分とは合わない」「最低な人間」と感じる可能性さえあります。

 

早ければ良いわけではない。

こちらの準備も、相手の準備もできていないことがあるからです。

 

……とはいえ、一長一短あるのはオルタネートだけではありません。

 

もちろん、オルタネートのおかげで出会い、結婚する人もいるでしょうし、

オルタネートで知り合っていながら、何年も経った後に再会、「当時はまったく魅力を感じなかったけど……」という人もいるのでしょう。

 

ようは、「酒は飲んでも呑まれるな」みたいな感じだと思います。

 

 

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Thank you for your reading!
I wish you all the best!

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