こんにちは。スピリチュアル作家の皇月ノエルです。
小説版「探偵はバーにいる」を読んだ直後、幸運にもテレビで映画版を放送することが分かり。
映画も拝見しました。
小説の「探偵はバーにいる」のストーリーは、映画版では「探偵はBARにいる3」に相当します。
小説の中で動き回っていた人たちに、有名な俳優さん、女優さんの顔と演技が加わり、心の中の風景がさらに鮮やかになりました。
同時に、気づいたことがひとつ。
原作小説と映画での、描かれ方の違いです。
2か所ありましたので、分けて書いていきたいと思います。
※原作小説のネタバレ的なものも含みますので、ご注意ください!
1, 侮辱を申し訳なく思う「俺」
原作小説の中に、「俺」が絡んできた少年に対し屈辱的な言葉をかけて挑発するシーンがあります。
低学歴だとか、親がどうのとか……いう話だったと記憶しています。
なぜそんなことをしたかと言えば、相手から殴り掛かってこさせるため。
おそらく、向かってきた相手をいなす方が、自分から仕掛けるより楽なのでしょう。
相手の少年は「俺」の読み通り、挑発に乗って襲い掛かってきました。
「俺」の作戦は成功したわけです。
しかし、「俺」はこのことを後に悔やんでいます。
本当は学歴がどうだろうと、「俺」は差別意識を抱いてはいなかったからです。
心にもないことを、自分の目的を達成するためだけに口にした。
けれど相手の少年には、「俺」の本音など分かるはずもありません。
逆上して殴り掛かってきたということは、学歴のことが少年にとって傷つくポイントだったのでしょう。
「俺」は少年を傷付けてしまったのです。
実は、映画「探偵はBARにいる」にも、同じような場面が登場します。
加藤に雪に埋められそうになる直前の会話です。
ここでも「俺」は、加藤に低学歴であることを馬鹿にして挑発します。
が、この挑発を後悔したという描写はありません。
というより、映像では表現できなかったのではないでしょうか?
言ってしまった言葉は取り消すことができません。
が、「俺」が何のためにそんな発言をしたのか?
そして、その後どう思っているのか?
この描写のあるなしで、「俺」に対する印象は大きく変わってくると思うのです。
先に原作小説を読んでいた私は、「俺」が先の挑発を後悔しており、罪悪感を引きずっていることを知っています。
ところがもし、私が先に映画を観ていたら、「俺」って変なキャラクターだな、好きになれないな……と思っていた可能性も高いと思うのです。
学歴のことは馬鹿にしておいて、オカマ(あえて映画通りの言葉を使っています)に対する偏見はないの?
どういう価値基準の人なの?
と思っていた可能性が非常に高い。
とはいえ、映像では目に見えることと、口に出されたことしか記録できないのが普通です。
人の言葉って、本当の心は分からないな、と思ってしまいます。
静かな星空
原作小説と映画では、キャラクター「ハル」の扱いが大分異なっていました。
小説では、ハルは麻薬をやって逃げまどっているヤバイ奴。
映画では、高田よりも空手の強い、手ごわい敵という印象が強いキャラクターとなっていました。
この違いにより、映画では取り上げられなかったシーンがあります。
小説では、「俺」とハルがビルの屋上で取っ組み合うのです。
この決闘の結果、ハルはヤクザに取り押さえられるわけですが、決闘後にふらふらになった「俺」の述懐で、印象的な言葉がありました。
星空についての描写です。(以下は引用ではありません)
視界の下半分は、ススキノのネオンとざわめき。
その中には、「俺」とハルがやりあった激しい格闘音も含まれていたことでしょう。
ですが視界の上半分に目を転じれば、そこには星空が広がるのみ。
そして地上でどんなに大きな声を張りあげようとしても、星空に吸い込まれて消えてしまう。
星空は「俺」が何をしていようとも、無関心であるかのように静まりかえっているのです。
この、宇宙の神秘というか、自分の小ささを痛感するというか……。
壮大なスケールをふいに感じる人間味あふれた一節が、強く印象に残りました。
私も、ふいに手に負えないほどの壮大さを感じる瞬間に覚えがあったからかもしれません。
だから、映画でこのシーンが取り上げられなかったのはちょっと残念でした。
でも同時に、「これは映像に表すのが難しかったのかもしれない」とも感じたのです。
映画には、映画を面白くするための撮り方、見せ方があると思います。
同時に小説にも、読者を引き込むテクニックや描き方があるのでしょう。
媒体が変われば、同じストーリーのものも違う見せ方をせざるを得ない。
逆に、その媒体でしか描けないやり方がある。
映画と文章という、2種類の表現方法の、決定的な違いを痛感する機会になりました。
Thank you for your reading!
I wish you all the best!
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