こんにちは。スピリチュアル作家の皇月ノエルです。
東直己先生著『探偵はバーにいる』(ハヤカワミステリーワールド)を拝読しました。
読み終えてから背表紙のあらすじを読み、これが「ハードボイルド小説」だったことに気づくという(笑)
とても面白く読ませていただきました。
特に、リアルな格闘シーンの描写は印象的です。
動作のひとつひとつが細かく描かれており、東先生の知識の豊富さが分かります。
私は格闘の知識も経験もないので、こんなに細かい書き方はできないでしょう。
また、冬の北海道の風景描写もすごい。
まるで写真を見ているかのよう。
全体を通して、描写の勉強になる一冊と言えました。
動作に隠されたエネルギーバランス
さて、ちょっとスピリチュアルな話をします。
『探偵はバーにいる』の中で、「これは!」と印象的な描写がいくつかありました。
ピックアップしてみます。
喉→第5チャクラ?
最初はこちらです。
クライマックスなので、ネタバレにはご注意ください!
「で……」
俺は軽く咳払いをして、喉の通りをよくした。
「……これを、渡しに来たんです」
上は202ページからの抜粋です。
この後、主人公の「俺」は偽善的というか……。
被害者の恋人に、被害者のお金を渡すことになるのです。
これは残された者に対する優しさですが、「俺」は深入りするつもりはありません。
実際、このセリフの直前には、
俺は話を手早く済ませて、涙が流れ出す前にフケちまおう、と固く心に決めた。
という、「俺」の決意が書かれています。
深入りはしないけれど、親切はきっちりこなす。
もしかすると照れ臭いような偽善的なセリフを、「渡しに来た」の後に言わなければならない。
「俺」はその直前に、喉を整えているのです。
喉には第5チャクラがあります。
第5チャクラはコミュニケーションを司るチャクラで、真実の表現ともいわれています。
咳払いして喉を整え、大事なところで声が途切れないようにする。
つまり「俺」は、本当の親切心からお金を渡しに来たのではないでしょうか。
作中を通して、「俺」は自分の親切心や同情心を否定的に見ていたと思われます。
けれど本当は頭は良いし、他人に共感することもできる優しい人です。
普段はそれを見せていないだけ。
そんな「俺」の本当の姿が、この描写に垣間見えていると思うのでした。
みぞおちから出る言葉とは?→第3チャクラ
チャクラに関してもうひとつ。
207ページからの描写です。
「女を買うことなんてできませんよ。金で、女の時間と体と心の一部を借りることしかできないんだ。違いますか?」
「ああ、それはモチロンそうだ。(中略)深い意味はないよ」
(中略)
つまらないアゲアシとりだった。しかし、なぜか言葉がミゾオチから飛び出してしまったのだ。
「女を買う」というよく使われる言い回しについて、「俺」はつい苦言を呈したくなってしまったようです。
でも、ミゾオチから言葉が出るってどういうことなのでしょうか?
私は第5チャクラがコミュニケーションを司ることを知っていたので、「ここは『喉』では? どうしてミゾオチなんだろう……?」と疑問に思ったのです。
そこで改めて第3チャクラについて調べると、驚くべき事実が発覚しました。
第3チャクラは重要なエネルギーセンターであると同時に、自分の意見が生まれる場所でもあるというのです。
つまりは、第3チャクラで意見が生まれ、第5チャクラがきちんと開いている人は、その意見をはっきり口に出すことができるのでしょう。
「俺」は酒浸りすぎて心配ですが、チャクラはとても活性化しているようです(^_^)
そして、第3チャクラの特徴から、「女を買うことはできない」という「俺」の主張が、「俺」の本音であり強い信念を持った意見であることも読み取れます。
「俺」は同性愛や低学歴を差別していないことを、作中で何度か人に伝えています。
「俺」の平等思想は、女性たちにも向けられているようです。
幅広い人間と関わる人は大人びる?
主人公の「俺」は28歳らしいです。
が、その振る舞いはある意味大人びていて、繊細な感性と行動力が同居しているかのようです。
私はその大人びた風情の理由は、幅広い人間と関わっているからではないかと思っています。
人は未知の存在を恐れ、敬遠してしまうものです。
海外に行ったことのない人は、外国人を。
うつになったことのない人は、うつにかかった人を。
自分がその立場になったことがない、あるいは相手の立場や状態を想像しきれなくて、「自分とはばったく違う、異質な人」として見てしまうのでしょう。
その点、「俺」は幅広い人間と関わり、相手の持つ苦悩や背景を想像する力に長けています。
だからこそ、ヤクザのフリをして事務所に押し入ったり、荒々しい言葉も使ったり、逆に礼儀正しいフリをすることもできるのかもしれません。
幅広い人と関わるからこそ、多様な価値観に触れる機会を得ることができる。
当事者と話すうちに偏見や嘘に気づき、相手のありのままを見られるようになる。
そうすると自分の懐も広くなって、大人びた態度が身に付く。
ついでにキリキリ苛立つことが少なくなって、人生が生きやすくなる。
そういうサイクルがあるのかもしれません。
Thank you for your reading!
I wish you all the best!
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